今年のF1では、暑いコンディション下で新たに冷却ベストの着用が可能になったが、ハースのエステバン・オコンは実用性に疑問符を浮かべており、現状では「誰も使えない」と主張した。
このウェアラブル冷却キットは、様々な要因が重なり複数の体調不良者を出した2023年カタールGPを受けてのモノ。理論上、酷暑に対応できるようドライバーの選択式で使用が可能になったが、その設計がドライバーにとっての不快感に繋がり、使用が難しくなっているという。
冷却キットは、コンプレッサーや熱交換ユニットが入ったボックスと、レーシングスーツの下に着用する、チューブが張り巡らされた耐火シャツで構成されるが、ドライバーの不快感を生んでいるのはチューブがレーシングスーツに入る接続部分だという。
オコンによると、この冷却キットは現状“使用不可能”だという。
「今のところ、冷却ベストは使えない」とオコンはプレシーズンテストが行なわれたバーレーンでメディアに語った。
「周囲にチューブがあるのはいいんだ。背中にもチューブがあるけど、それも問題ない。でも腰のサイドに巨大なテニスボール的なモノがある」
「ここ(胸)につけるとベルトで痛む。背中につけるとシートに収まらない。今のところ、少なくとも僕らが試した限りでは、僕らは使えない。他のドライバーの話を聞くと、似たようなものらしい」
「FIAが解決策を提示してくれたのは良いことだ。でも現時点では、少なくとも僕らは使えない。他のドライバーのために言うわけじゃないけど、僕とオリー(オリバー・ベアマン/ハース)は使えない」

「スタンダードだけど、製品自体が使えない。大きすぎる。F1シートがどれだけ窮屈か、誰でも知っているはずだ。全てのチューブがつながっていて、まるでチューブの結び目みたいなものができている。だから大きすぎるんだ」
今のところ、このシステムを使うかどうかはドライバーに選択権があるが、2026年からはFIAが使用を義務化する予定だ。FIAが冷却キットを改良する時間する時間は残されているが、改善の選択肢は限られているとオコンは考えている。
F1のコックピットにこのシステムを対応させることはできるか? と訊かれたオコンはこう答えた。
「巨大な穴のあいたシートがほしいなら、それは無理だね。シートというのはとても難しい。あれに切り込みを入れると柔軟性が大きく損なわれる」
「改善されるとしたら、結び目を少なくするか、別に必要はないけど市販車のようにシートを通してエアコンを使うような解決策を考え出すしかない」
またオコンは、この冷却キットの使用を義務化する必要性にも疑問を呈しており、ドライバーはトレーニングを通じて過酷なコンディションに上手く対処していると主張した。
「まだあまり必要じゃない」とオコンは言う。
「カタールや時にはシンガポールなど、過酷なコンディションでは同意する。でも昨年のカタールでは、レースウィークに入る前に1週間サウナでサイクリングをしたけど、到着したらジャケットを来ていた。とても寒かったから、何のためにあんなに一生懸命準備したのか、ちょっと腹が立ったよ!」

「これ以上の議論があるかどうか分からない。今のところ、誰もそれを使える状況にないと思う。僕はそう思っている。間違っているかもしれないけど、みんなこのチューブをマシンに入れるのに苦労していると思う」
「このシステムを搭載して重量が増えることは問題ないし、使いたくなければ使わない。でも、現時点では使えない。わがままで使いたくないと言っているんじゃないよ! 実際は逆だ。むしろ場合によっては使いたい。でも、ただ上手くフィットしないんだ」
2026年シーズンの義務化に向けて、FIAはチームと緊密に連携してシステムを改良し、コックピットに組み込めるようにする必要がある。