2月16日、愛知県のパークアリーナ小牧で『Fリーグ2024-2025 ディビジョン1 ファイナルシーズン 小牧ラウンド』バルドラール浦安vsしながわシティが行われた。
前節終了時点で勝ち点59で首位の浦安と、勝ち点56で2位のしながわの直接対決は、事実上の優勝決定戦。得失点差でもアドバンテージを持つ浦安は7分、田中晃輝との連係から菅谷知寿が先制点を挙げる。12分、オウンゴールで同点に追いついたしながわは、残り3分で新井裕生をGKにパワープレーを開始。これが奏効し、19分にはサカイ・ダニエル・ユウジのゴールで逆転に成功する。しかし、わずか9秒後には田中が同点弾を挙げ、2-2で第1ピリオドを折り返した。
第2ピリオドではしながわが長い時間、パワープレーを続ける。パワープレー返しで得点を重ねる浦安に対し、しながわも意地を見せ、残り1分56秒で同点に追いついた。最終スコア5-5で試合が終了し、勝ち点を60に伸ばした浦安が2024-2025シーズンの栄冠を手にした。
得点王は24試合29得点で名古屋オーシャンズの清水和也。新人賞はサッカー選手としてJリーグで活躍した礒貝洋光氏の甥でもある、ペスカドーラ町田の礒貝飛那大が受賞した。最優秀選手賞には、44歳でなお衰えないプレーを見せる浦安のピレス・イゴールが輝いた。
そのイゴールは「チームとして最初から最後まですごくいいパフォーマンスを見せた。これまでのシーズンや(以前在籍していた)大阪や町田でも、シーズン中に波があることは当然だった。でも、今シーズンの浦安はレギュラーシーズンで波がなかったから優勝できたと思う」と振り返る。
昨年4月に出場したAFCフットサルアジアカップでは予選で敗退し、ワールドカップ出場を逃して迎えたシーズン。「個人の目標は、もう一度ワールドカップに出ることだった。息子も少しずつフットサルを理解できるようになってきたのに、AFCで敗退してワールドカップに出られず、本当に悔しくて、どういった気持ちでフットサルを続ければいいか。でも、自分は代表には入らないと思うけど、もう一度日本がワールドカップに出るためのサポートができると思う。若いGKは『あのおじちゃんでも頑張っている』と負けない気持ちが出て、レベルが上がって日本はもっと強くなる。身体がボロボロになるまで、家族のためにもプレーを続けたい」と新たな目標を語る。
「いつも病気(2020年に発症したギランバレー症候群)になったときに、もうフットサルができないと思ったことを思い出す」と時折涙を浮かべ、「日本に来てからこの優勝を目指していて、復帰できて、マジで最高。本当にうれしい。家族のおかげ、仲間のおかげだと思う」と満面の笑顔を見せた。
主将の石田健太郎も、AFC敗退を経験した一人。悔恨の思いを持って臨んだシーズン、主将としての自覚も増し、以前に比べて自ら発する言葉も増えた。新たにリーグ優勝という経験も経て、今後どのような未来を描いているのか。「ワールドカップに出られなかったことは、人生で一番悔しかった」と石田。「(敗退は)重く感じていたが、日本に帰ってきてすぐにオーシャンカップがあって、リーグも始まって、切り替えないといけない気持ちはあった。ワンプレーで決まる世界なので、監督がいつも言うようにすべてのプレーを100%でやらないと勝てないと身に染みて感じた。今シーズン、僕だけではなく全員が常に100%で取り組んだ結果。これから全日本もあるが、これまで積み上げてきたものを出し続けたら優勝できると思うし、さらにレベルアップできると思っている。まだリーグ優勝を喜びたいが、来週には大会が始まるので切り替えていきたい」と意気込みを語った。
浦安を率いて5年目の小宮山友祐監督は、2007年のFリーグ開幕から2016-2017シーズンの引退まで同チームでプレー。アシスタントコーチやクラブディレクターを経て、2020-2021シーズンに監督に就任した。現役時代から絶対王者と評される名古屋オーシャンズの打倒を掲げ、リーグ優勝に並々ならぬ思いを抱いていたが、監督就任後の最高位は2022-2023シーズンの3位。今シーズンは開幕前から退任を決めており、覚悟を持って臨んだシーズンだった。
第16節のボルクバレット北九州戦では、キックオフからパワープレーを受け「浦安対策」をされるチームになったことを印象づけた。常に優勝から逆算し、シーズン終盤には得失点差を意識した戦いを見せた。第22節のY.S.C.C.横浜戦では、4点リードの残り6秒でタイムアウトを取ると、ロドリゴのキックインがオウンゴールを誘発しリードを広げて試合終了。第25節のペスカドーラ町田戦では、これまでの良さが出ずに失点を重ねたが「傷口を広げず1-5で試合を終えてくれ」という指示を選手たちが体現した。就任後、名古屋に勝利したことは一度もなく、今シーズンもレギュラーシーズンは1分1敗。しかし、第26節では6-3で名古屋を下す。自信を持って最終戦に臨めたことも、優勝のひとつの要因だった。
守備をベースとするチームはリーグ最少の53失点。小宮山監督が口にしてきた「失点しなければ勝てる」「フットサルは守備のスポーツ」という言葉を結果で示した。浦安が標榜する「常に相手コートでプレーをし、激しいプレスでマイボールにしてゴールを奪う」というフットサルに、GKのイゴールが起点となる攻撃も加わり、厚みが増した今シーズンは、リーグ最多得点の106得点もマーク。「全員が、チームが勝つために必要なこと、私が求めているフットサルをしてくれた。技術の高い選手でも、相手からボールを奪わなければその技術は発揮できない。相手からボールを奪うことで初めてフットサルは成立すると思っているので、それを体現できたのが今シーズンの我々だった」と小宮山監督。足元の技術やスピードのイメージが強いフットサルに、新たな魅力を印象づけた。
18年目の悲願達成を「本当に勇敢で仲間思いで他責にしない、しっかりと自分に矢印を向けた素晴らしい選手たちと巡り合えたことが何よりうれしかった。彼らの喜んでいる姿を見ることができて、このために自分は監督をしてきたと改めて思った。選手たち、これまでバルドラール浦安を支えてくれた皆さんに心からおめでとうと伝えたい」と喜ぶ。名古屋オーシャンズ、シュライカー大阪に続き、優勝クラブとしてFリーグの歴史に名前を刻んだ。
年々競技力が増し、熾烈な優勝争いで観客を楽しませるFリーグ。しかし、今回のファイナルシーズンでは観客数が200人台、300人台にとどまる試合も散見された。組み合わせの発表が直前だったために、現地観戦をあきらめざるを得ないファンもいた。各クラブが集客やプロモーションに力を入れ、監督や選手が人生を懸けて臨んでいるフットサル。その魅力をFリーグ本体がきちんと外に届けていくことは急務だろう。

【Fリーグ2024-2025 最終結果】
<ディビジョン1>
■優勝 バルドラール浦安
■準優勝 名古屋オーシャンズ
■最優秀選手賞 ピレス・イゴール(浦安)
■ベスト5
ピレス・イゴール(浦安)/本石猛裕(浦安)/石田 健太郎(浦安)/カイオ(しながわ)/清水和也(名古屋)
■新人賞 礒貝飛那大(町田)
■得点王 清水和也
■フェアプレー賞 ヴォスクオーレ仙台
■最優秀審判員賞 山﨑聖也
<ディビジョン2>
■優勝 ボアルース長野(ディビジョン1昇格)
■最優秀選手賞 室田祐希(エスポラーダ北海道)
■得点王 山桐正護(アグレミーナ浜松)
■フェアプレー賞 ヴィンセドール白山