ピッチに入ったのは1点ビハインドの試合終盤。短いプレー時間でも、がむしゃらに前進するMF越道草太がチームにもサポーターにも力をもたらした。
サンフレッチェ広島は5月31日、明治安田J1リーグ第19節で川崎フロンターレをホームに迎えた。前半は相手に主導権を握られるも、GK大迫敬介の好セーブなど堅守で得点を許さず。後半はMF菅大輝とFW中村草太をスタートから投入して攻め込んだが、50分に失点。86分に中村のクロスからDF荒木隼人の2試合連続ゴールで追いついたが、試合終了間際に失点を許して1-2の敗戦で連勝が5でストップした。
越道は83分に途中出場し、右ウイングバックでプレー。「ベンチから見ていて、相手にボールを持たれる時間が多くてすごく苦しそうだったので、自分が入った時に流れ変えたいと思っていた」と話す21歳がチームを勢いづけたのはピッチに立って1分後のことだった。
84分、右サイドで越道がMF川辺駿のパスを胸トラップで収めるとすぐに前を向いた。「相手も疲れていたと思うので、自分がどんどん縦に仕掛けて嫌なことをしたいと思っていた」と持ち前の推進力を発揮。相手の激しいチャージで体勢を崩されたが、越道は止まらなかった。
「この(スタジアムの)雰囲気がすごく自分を踏ん張らせてくれた」。声援の後押しを受けて粘って相手の前にうまく体を入れると、ファールを受けてFKを獲得。気持ちがこもったプレーでサポーターの心にもさらに火をつけた。「(サポーターの)熱量を実感もしましたし、自分も奮い立たせられました。すごく気持ちよかったです」と胸を張った。
このFKから広島は波状攻撃を仕掛けて、最後は荒木の同点ゴールにつながった。起点を作った越道は、「ファーストタッチがちょっと上手くいかなかったけど、そこでも焦らず自分の形に持っていけた。たぶん1回目で倒れていたらファールを取られなかったと思うので、しっかり我慢してチャンスクリエイトできてよかった」と振り返った。
直後の87分には右サイドでボールをキープし、ケガから復帰したMFマルコス・ジュニオールに預けてペナルティエリア右へ入ると、川辺からのパスを受けてシュート。「自分が引き出した時に相手が食いついてくると思ったので、マルコスに出した後にスペースに走ることを意識していたし、駿くんも絶対出してくれると思っていた」と振り返り、「あとは最後のクオリティのところだけでした」と決めきれずに悔やむ。短いプレー時間でもシュートまで持ち込めたが、「1歩成長したかなという感じだけど、やっぱり勝たせられないのが現状です」と敗戦を受け止めた。
今季は試合終盤での途中出場が多く、プレー時間も長くはないが、それでもピッチに立てば、がむしゃらな姿勢でインパクトを残している。「毎日ポジティブに物事を捉えて、練習で100パーセントやらないといいプレーはできないと思うので、次、次と思いながらいつもやっています」と前向きに取り組み、出場時間を増やしてチームを勝たせるために「守備での安定とゴールにつながるプレーや結果が必要」と自身の課題を捉えている。
今節でJ1通算50試合出場となったが、越道は、「ちょっとしか出ていないので感覚はないです。それより結果が大事なので満足してないです」とますます意欲を高める。「プレー時間は短いけど、最近はいい形や感覚があるので、次に向けていい準備するだけ」。がむしゃらなインパクトがチームを勝たせるときがくる。その日まで越道は止まらない。