ボルティモア・レイブンズは優秀な選手を手放すようなチームではない。そして、タイトエンド(TE)マーク・アンドリュースは確かに優秀な選手だ。
しかし、だからといってアンドリュースのレイブンズでの将来が保証されているわけではない。
TEアイザイア・ライクリーが活躍している上に、プレーオフのバッファロー・ビルズ戦で見せたパフォーマンス――試合終盤に痛恨のファンブルでボールを失い、同点につながるはずだった2ポイントコンバージョンも落球――と、2025年に占めるキャップスペース(1,100万ドル/約15億7,013万円)が相まって、アンドリュースが近いうちに別のユニフォームを着ることになるのではないかとの見方が広がっている。
2025年ドラフトまであと1週間あまりとなる中、できる限り慎重な姿勢を崩さなかったジェネラルマネジャー(GM)エリック・デコスタは、現地15日(火)に臨んだ記者会見でアンドリュースの残留について明言を避けた。
チーム公式記録によると、デコスタGMはプロボウルに3度選出され、2021年にオールプロのファーストチームにも選ばれたアンドリュースについて「何が起こるかは分からないし、あれこれ言いたくはないが、これだけは言える。マーク・アンドリュースは戦士であり、全力でプレーしてくれている。彼の競争心、才能、態度、リーダーシップは、このチームで非常に高く評価されている」と述べたという。
「彼は素晴らしい選手であり、私たちはできる限り多くの素晴らしい選手を保ち続けることを目指している。ドラフトには常に、予測不可能なことが多くある。とにかく分からないのだ。私たちはあまり多くの選手をトレードしてこなかったと思う。私たちがドラフト中に自分たちの選手をトレードしたことはあるだろうか?」
デコスタGMが投げかけた質問に対する答えはイエスだ。レイブンズがドラフト中に注目選手をトレードしたことはあり、2022年ドラフト1巡目の指名が行われる中、ワイドレシーバー(WR)マーキス・ブラウンをアリゾナ・カーディナルスにトレードし、その見返りとして得た指名権を用いてセンター(C)タイラー・リンダーバウムを獲得した。しかし、実はこのトレードには2022年のドラフトウイークが始まる時点ですでに合意しており、1巡目指名が始まるまでその情報を秘密にしていたのだとデコスタGMは明かしている。
ドラフト中にアンドリュースを移籍させるのは異例の行為であり、ジョン・ハーボーHC(ヘッドコーチ)の思い通りに事が進めば、アンドリュースがチームを離れることはないだろう。ハーボーHCは年次リーグミーティングの場で、アンドリュースと連絡を取り合っていると報道陣に明かしていた。また、アンドリュースは3月の新リーグイヤー開始から5日目に400万ドル(約5億7,096万円)のロースターボーナスを受け取ったと報じられている。
実質的に、その日はアンドリュースを移籍させて財務上の節約を最大化するための事実上の期限となった。しかし、レイブンズはそうした動きに出なかったため、アンドリュースが2025年にチームに残る可能性は高まっている。
保証はないが、ハーボーHCの発言から判断すると、7年のキャリアを誇るベテラン選手のアンドリュースがいなくなった方がチームは良くなるという考えをハーボーHCに納得させるにはそれなりの説得が必要になるだろう。
ハーボーHCは3月に「ああ、私たちは何度も連絡を取り合っている」と話していた。
「私から毎日連絡が来るのは誰も望んでいないだろうし、“コーチ、また連絡してくるのかよ”と思うはずだ。でも、マークは良い状態だし、とても懸命に取り組んでいる。来年もうちでプレーしてくれると心から期待している。彼はものすごく優秀な選手だからね」
「もちろん、どの選手にもそういったことはある。おそらくどの選手もそうだし、それがコーチと選手というものだ。ナショナル・フットボール・リーグではよくあることで、契約の一部でもあるから、誰がどうなるかは言えない。だが、マークはここに残ってくれると私が期待している数少ない選手の1人だから、どうなるか見ていこう。私としては、マーク、アイザイア、チャーリー(コラー)、パトリック・リカールの全員に仕事を全うしてもらうつもりだ」
レイブンズはランとパスの両方で豊富な戦力をそろえており、アンドリュースがいなくても乗り切れるだろう。しかし、すぐにアンドリュースを手放せば、クオーターバック(QB)ラマー・ジャクソンが加入してからレイブンズのオフェンスが進化する中でアンドリュースが果たしてきた大きな役割を見逃すことになる。ジャクソンがボルティモアでキャリアを築く上で、アンドリュースはパスゲームにおいて最も生産的で信頼できるターゲットだった。確かに、レイブンズのパスゲームはワイドレシーバー(WR)ゼイ・フラワーズやラショッド・ベイトマンを含む多くのパスキャッチャーを起用する近代的なものへと変化しているが、アンドリュースの貢献がなければ、ここまで到達することはできなかっただろう。
レイブンズはその現実を認識しているようだ。そして、ドラフトが近づく中でデコスタGMがどのような発言をしようと、レイブンズがわずかなキャップスペースを確保するためだけにアンドリュースのような生産性の高い選手を手放すことはなさそうだ。