地元の富山市での大相撲春巡業に参加し、報道陣の質問に答える朝乃山
大相撲の春巡業が6日、富山市で行われ、同市出身の元大関で三段目の朝乃山が大きな声援を浴びた。春巡業には加わっていなかったが、主催者の意向で特別参加。左膝前十字靱帯断裂などからの復活を目指す実力者は、「年内の幕内復帰を目標にしている。元気をもらった」と活力を得た様子だった。
5場所連続休場明けの春場所は7戦全勝で三段目優勝。夏場所(5月11日初日、両国国技館)では、場所後の十両復帰を狙える幕下15枚目以内に浮上の可能性もある。故郷での巡業には幕下以下が着ける黒まわし姿での参加。関取ではないため、大相撲界の原則に従ってファンからのサインの求めも断った。「書きたいけどここは我慢しないといけない。一場所でも早く関取に戻りたい」と再起を誓った。
小結だった昨年5月の夏場所を右膝のけがで全休すると、次の名古屋場所で左膝前十字靱帯断裂などの重傷を負い、長期離脱となった。手術を受け階段の上り下りもきつかったところからリハビリに耐えた。下半身中心に鍛え、今年2月に相撲を取る稽古を再開。「初めは怖かったが、やっぱり楽しい」と土俵に立つ喜びをかみしめた。
3月1日に31歳の誕生日を迎えた。「40歳まで幕内で取りたいと思っているので、(40歳で関取最年長の)玉鷲関を尊敬している」という。「人生うまくいかないこともたくさんあった。山あり谷あり」。新型コロナ対策のガイドライン違反による6場所出場停止処分があり、2度目の三段目転落から再び大銀杏を結える関取を目指す。
刺激を受ける存在が大相撲界入りした。昨年11月の全国学生相撲選手権で8強入りした近大4年の浦山秀誠が音羽山部屋へ入門した。幕下最下位格付け出し資格を得ており、夏場所で初土俵予定。「早く関取になりたい。愛される力士になりたい」と語った。
183センチ、160キロで押し相撲が得意。平成29年1月に40歳で亡くなった父・浦山英樹さんは、朝乃山の富山商高時代の恩師だった。長男の浦山は「父も大相撲に行きたかったという話を聞いたことがある。その分も頑張りたい」と意欲。同郷で高校、大学の先輩との対戦に思いをはせ「地元も盛り上がる。勝ちたい」と話した。
朝乃山は令和4年名古屋場所から、しこ名の下の名前を浦山さんからもらっていた「英樹」から本名の「広暉」に変えた。「不祥事を起こし先生の名前は名乗れない。父がつけてくれた名前をつけようと思った」。昨年4月の春巡業で地元に立ち寄った際、亡き父・石橋靖さんと右四つの型を教え込んだ浦山さんの仏前に、「ここからが勝負」と誓った。その思いを土俵で体現する。(江坂勇始)