ピコチャンブラック(牡、上原佑)が自分との闘いに挑む。皐月賞トライアル・スプリングS(G2、芝1800メートル、16日=中山、3着まで優先出走権)に向け13日、メンバー唯一の木曜追い切りを行った。濃霧の中、美浦ウッドで切れのある動きを披露。気難しさを出した前走ホープフルS13着からの巻き返しへ、陣営が工夫を凝らした。
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朝イチの美浦ウッドは白一色。かろうじて目視できる直線、ピコチャンブラックが石橋騎手を背に霧中から飛んできた。ゴール後も突き抜けるほどの躍動感で、5ハロン69秒9-11秒4(馬なり)。鞍上は「やっぱりすごいよね、走りっぷりが」と褒めれば、上原佑師も「ここ最近では一番リラックスして走れていた。やりたい調教ができた」と納得顔を浮かべた。
最大の敵は自分だ。前走は1週前追い切り後から、気持ちの高ぶりが収まらなかった。ハミを制御力の強いトライアビットに替えたが、レースでも集中力を欠いた。師は「もろいところが出た。今もですが他馬を怖がる面がある」と振り返る。
今回は策を講じた。テーマは精神面の安定化。2戦ぶりコンビの鞍上が4週連続で調教に騎乗。中間は当たりの優しいハミに、レースではノーマルハミと使い分ける。師は「ハミ受けは難しくない。普段からコンタクトを取ってもらって、頑張りすぎなくてもいいんだよ、と理解させたかった」と説明する。以前は調教からの帰路の地下馬道でも高ぶったが、この日は落ち着いて歩けた。狙い通りに、心のオンオフが利いた。
2走前のアイビーSはのちに共同通信杯を制すマスカレードボールに0秒2差の2着。世代でも上位の力を秘める。師は「少頭数ですし、外めで自分の競馬に徹してほしい」と願う。自分に勝てば、おのずと結果はついてくる。【桑原幹久】
◆スプリングSの父子3代制覇 ピコチャンブラックの祖父ブラックタイドは04年、父キタサンブラックは15年に制覇しており、父子3代制覇がかかる。また、近親のアンライバルドは09年、母の父ネオユニヴァースは03年に制覇と縁深い血統だ。