2024年度のロンジンワールドベストレースホースランキング(LWBRR)はレーティング128で2頭が栄冠を分け合った。JRAの“年度代表馬”的な感覚では芝GⅠ3勝(英ダービー、エクリプスS、インターナショナルS)のシティオブトロイの戴冠は納得。一方、ローレルリバーは1~3月に3戦(2勝)し、GⅠタイトルは1つのみ。通年で活躍したわけではないが、ドバイワールドCの1秒5差圧勝が高く評価された形だ。「競走馬の能力を示す客観的な指標となるもので、着差・負担重量などをもとに、国際的に統一された基準により、数値化したもの」(JRAホームページ)であるレーティングによるランキングゆえの現象といえる。
そのドバイワールドCで“完敗”の2着がウシュバテソーロ。ダート部門・古馬では日本馬最上位119を獲得したが、対象パフォーマンスは同じ2着でもアタマ差惜敗だったサウジカップ。同レース勝ち馬セニョールバスカドール(ドバイWC3着)は24年シーズンが7戦1勝でレーティングは120。つまりサウジCはレース自体の評価が低かったことになる。
IFHA(国際競馬統括機関連盟)が発表した「世界のトップ100GⅠ競走」でドバイワールドCはダート競走において3位(全体12位)=121、サウジCはダート5位(全体26位)=119・50だった。下半期は23年シーズンとまったく同じ3戦(日本テレビ盃→BCクラシック→東京大賞典)を選択したが、結果は1、5、1着から2、10、4着と明白な戦力ダウンを示した。当コーナーとしても昨年67キロからの現状維持が精一杯の評価となる。
100GⅠ競走においてダート首位(全体2位)はトラヴァーズS=123・75。このレースおよびフロリダダービーとGⅠ2勝(6戦3勝)のフィアースネスはLWBRRにおいてダート2位(全体5位)のレーティング125を獲得。ダート2位、全体ではジャパンCと並ぶ5位評価=122・50がBCクラシックとなる。
フォーエバーヤングは2着フィアースネスから1馬身1/4遅れの3着。勝ち馬シエラレオーネにはケンタッキーダービー(ダート4位=120・50)に続いて後塵を拝したが、ダートの本場のGⅠ中のGⅠでの連続3着。これは高い評価を与えるべき偉業といえる。LWBRRにおける評価121はダート5位でもちろん日本馬トップ。日本国内においても記念すべき第1回のジャパンダートクラシックを制し3歳馬の頂点に立つと暮れの東京大賞典では古馬勢も撃破。2月のサウジダービーで始動、6戦(4勝)して4着以下なしという通年における高いパフォーマンスはダートの枠に止まらない、まさに年度代表馬級の活躍だった。首位の68キロ評価とする。

一方、JRA賞・最優秀ダートホース部門はレモンポップが23年度に続いて受賞。獲得したGⅠ・JpnⅠタイトルは前年に続き3つ。JRA所属馬では年間最多勝(チェルヴィニア、ドウデュース、フォーエバーヤング=2勝)だから年度代表馬に1票が投じられたことも、ある意味納得がいく。その一方でさきたま杯、南部杯は相手にかなり恵まれた側面も。連覇達成のチャンピオンズCを評価し7ハロン超で前年から1キロ増の66キロとした。
キングズソードはフェブラリーS5着→かしわ記念4着とマイル戦では善戦止まりだったが、23年にJBCクラシックを制した大井10ハロンが舞台の帝王賞を0秒3差完勝。その2着馬はドバイWC(4着)以降の5戦をオール連対と通年にわたって“物差し”となるパフォーマンスを見せたウィルソンテソーロ(65キロ)だった。同年1勝でも高い評価が必要。前年から3キロ増66キロを与える。
牝馬でトップ評価は唯一の限定戦・JpnⅠとなるJBCレディスクラシックを制した3歳アンモシエラ(60キロ)。羽田盃2着→東京ダービー3着と牡馬相手にも善戦した能力が本物であることを実証した。その一方で固定化されたメンバーでの戴冠を過剰評価できない面も。さらにオーサムリザルトの不在が最大勝因だった側面もある。同馬はJBCの2日前に行われたBCディスタフに遠征も無念の取り消し。GⅠ奪取はお預けとなったが、重賞2勝目を挙げたブリーダーズゴールドCの5馬身差圧勝は60キロに値するパフォーマンスだった。
7ハロン以下のJpnⅠは24年から昇格したさきたま杯(浦和7ハロン)とJBCスプリントの2戦のみ。施行場が佐賀となった後者は7ハロンが舞台となり、同年は6ハロンの頂上決戦は国内では行われなかった。それゆえ生粋のダートスプリンターが海外に流出。その間隙を突く形になったJBCスプリント=タガノビューティーは62キロ止まりに。
一方、リメイクは6ハロン戦に専念し海外のみを4走。リヤドダートスプリント、コリアスプリントと勝利はGⅢだったが、路線における第一人者であったことは間違いない。7ハロン以下ではレモンポップに次ぐ63キロとした。
ガビーズシスターは現状のタイトルが斤量54キロだったGⅢカペラSのみ。56キロと末席でのランクインだが、ダート6ハロン以下は6戦5勝、2着1回と底を見せていない。初遠征となるリヤドダートスプリントでの世界デビューで好結果を残せば25年は路線の主役に躍り出て不思議はない。