フォーミュラE、次世代マシン“Gen4”にパワーステアリング導入! 女性ドライバーの参戦促進へ

フォーミュラE、次世代マシン“Gen4”にパワーステアリング導入! 女性ドライバーの参戦促進へ

フォーミュラはシーズン13(2026-27年シーズン)から導入を予定している第4世代マシンGen4にパワーステアリングを採用する。これはジェンダーギャップをなくすための取り組みの一環であるという。

今年のシーズン11(2024-25)から改良型の新車両Gen3 Evoを導入したフォーミュラEは、1年半後には早くも大きなテクニカルレギュレーション変更を控えており、次世代マシンGen4が登場する。

このGen4では最高出力が現行車両の約2倍となる600kW(815PS)に引き上げられ、既に現在参戦しているパワートレインマニュファクチャラーでは、マヒンドラを除き、日産とジャガー、ポルシェ、ローラが2030年まで続くこのレギュレーションに合意。また空力にも重点が置かれ、ハイダウンフォースとローダウンフォース仕様のパッケージが開発される。

そしてGen4では、性別による越えられない身体的な参戦障壁をなくすことも課題のひとつだとして、マシン操作において高い筋力・筋持久力を必要としないパワーステアリングが採用される。

実際、シーズン11に先駆けてスペインのハラマで開催されたプレシーズンテスト最終日の女性ドライバー限定走行セッションで現行のGen3 Evoを走らせた小山美姫は、パワーステアリングのない所謂”重ステ”に苦労したという。

「ハンドルが重すぎました。日本では体験したことがないくらいです」と小山は言う。

「しかも今年から4駆になりましたからね。ベテラン勢も重くて乗れないと言っていて、『この後の女性枠で、みんな乗れるのか?』という話は議論になっていましたね」

しかしフォーミュラEのジェフ・ドッズCEOはmotorsport.comの独占インタビューで、Gen4ではその状況も変わると明かした。

「歴史的に見ても、レーシングカーは男性が運転することを前提に作られてきた」

ドッズCEOはそう語った。

「例えばシートの設計など、フォーミュラEの現行マシンにはパワーステアリングが搭載されておらず、非常に強い上半身の筋力や首の力が求められる。これは一般的に男性の身体的特性に適した条件だ」

「しかし1年半後に導入予定のGen 4マシンには、パワーステアリングが搭載される。また新しいマシンの設計には、ジェンダーの観点も考慮される」

男女比率はモータースポーツへの参画という点で度々議題として取り上げられてきた。実際、FIAのレースライセンス保持者の97%が男性であり、四輪モータースポーツの頂点であるF1の75年という歴史の中でも、決勝グリッドまでたどり着いたのはわずかふたりだ。

「レースドライバー、そしてエリートレベルのドライバーになるための流れをファンネルとして見た時、入り口の97%が男性だとすると、最終的に女性がF1やフォーミュラEといった世界選手権レベルのドライバーまで到達できる可能性は、数学的に考えてもほぼ不可能に近い。あまりにも多くの障壁がある」

ドッズCEOはそう語り、次のように続けた。

「もし今後1~2シーズン以内に女性ドライバーがフォーミュラEへ参戦することになれば、これ以上嬉しいことはない。しかし現実的に言って、これは競争の世界だ。チームはレースに勝つために最適なドライバーを選ぶ他ない」

フォーミュラE、次世代マシン“Gen4”にパワーステアリング導入! 女性ドライバーの参戦促進へ

「だからこそ、単に女性をマシンに乗せることが目的ではなく、彼女たちがそのチャンスを掴み、成功し、チャンピオンを争えるようにすることが重要だ」

プレシーズンテストの女性限定走行テストはフォーミュラEにとって初めての試みとなり、小山を含む18名の女性ドライバーが参加して、Gen3 Evoを走らせた。また先日行なわれたジェッダE-Prixでのルーキー走行セッションには、そこから2名の女性ドライバーが出場した。

「今回の女性限定テストで我々が最も驚いたのは、世界中のメディアからの関心の高さだった」とドッズCEOは振り返った。

「フォーミュラE自体にはそれほど注目していなかった放送局が、この女性限定テストには強い関心を持ち、グローバルに報道してくれた。BBC、ESPN、ブルームバーグなど、多くのメディアがこれを取り上げ、今までフォーミュラEに関心を示していなかった人々の注目を集めた」

「今回は初めての試みであり、みんなが興味を持つのも当然だったが、実際に女性限定テストが行なわれたのがわずか半日だったにもかかわらず、その報道量はテスト全体の報道量と同じくらいだった。つまり、みんなこのテーマに強い関心を持ち、もっと知りたいと思っているということだ」

「しかし、この動きが何の変化も生み出さなければ、すべての努力が無駄になってしまう。これによって何かが変わり、『テクノロジーが好きだし、カートをやってみたい。でもエリートレベルでレースをするのは無理だろう』と思っていた小さな女の子が、このテストを見て『私も挑戦できるかもしれない』と感じ、より努力して最終的にレースをするようになれば、我々の役割は果たされたことになる」

そしてドッズCEOはインタビューの締めくくりとしてこう語った。

「我々はパワーステアリングの導入や女性限定テストの実施など、少しずつ改善を試みている」

「それでもなお、最終的に22人のグリッドに女性がひとりもいないかもしれない。しかし、それを理由に何もしないのではなく、『まず理解し、行動すること』に意味があると考えている」

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