日本相撲協会は25日、3月の春場所(9日初日、エディオンアリーナ大阪)の新番付を発表し、母方の祖父が「昭和の大横綱」といわれた大鵬で、1月の初場所では優勝同点の12勝を挙げた王鵬(25)が新三役となる新関脇に就いた。父は元関脇貴闘力。親子三役は史上7組目で、3世代の三役は祖父に元横綱琴桜、父に元関脇琴ノ若(現佐渡ケ嶽親方)を持つ大関琴桜(27)の例はあるが、極めて異例となる。2度目の優勝を遂げた初場所後に第74代横綱に昇進した豊昇龍(25)は東の正位に座った。
ときの勢いよりも、地位に見合った地力を蓄える。新三役。小結を越して関脇となった王鵬はこの日、大阪市内の大嶽部屋宿舎で会見に臨み、新番付を手にした。
「まだ実感はない。でも、ずっと目指してやってきた。ぼくとすれば長かったけど、コツコツやってきた結果なので」
新入幕から3年かかったが、初場所では千秋楽まで賜杯を争い、優勝して横綱へ昇進した豊昇龍、平幕金峰山との優勝決定ともえ戦まで進んだ。「ここからは勝つことが仕事になる。安定して勝てるようにしていきたい。これまでどおり攻める相撲を取っていく」。武器の突き押しに加え、四つ相撲でも成長をみせる。最近では反り腰にならず、179キロの体を生かし前傾姿勢を保って粘るようになった。
祖父の元大鵬は昭和35年名古屋場所で新三役(小結)に昇進し、いきなり11勝。ここから疾風怒濤(どとう)の勢いで時代の流れを一気にかえた。小結を1場所、関脇を2場所、大関を5場所で通過。横綱へ駆け上がった。
この8場所ではすべて10勝以上を挙げ、関脇で初優勝を経験して3度の優勝、優勝次点も3度。王鵬は「速かったことは知っているが、意識してどうこうできることでもない」。同学年で同期入門の豊昇龍の昇進も「人と比べて生きてこなかった」と泰然と受け流す。
それでも、師匠への恩に報いるチャンスはつくった。大嶽親方(元十両大竜)は9月の秋場所(14日初日、両国国技館)を最後に、協会の定年(65歳)を迎える。大関昇進の目安は「直近3場所を三役で33勝以上」。時間はある。同親方は「0ではない以上、可能性は信じたいよね」。隔世ならぬ〝覚醒遺伝〟を楽しみにする。(奥村展也)