2025年シーズンの参戦ドライバーが出揃い、既に事前テストも終えて開幕まで2週間を切っているスーパーフォーミュラ。しかしその中で気になるのは、4月にモビリティリゾートもてぎで行なわれる第3戦・第4戦において、Kids com Team KCMGが7号車のドライバーに誰を起用するかだ。
7号車のレギュラードライバーを務めるのは小林可夢偉。しかし小林はWEC(世界耐久選手権)にもTOYOTA GAZOO Racing(TGR)のチーム代表兼ドライバーとして参戦しており、もてぎ戦の週末はWECイモラ6時間がバッティングしている。小林はWECを優先するため、KCMGはもてぎ戦で代役を起用する必要があるのだ。
この代役起用について、KCMGのチーム代表兼監督である土居隆二氏は鈴鹿テストでの記者会見の際に次のように語っていた。
「いくつかの可能性があります」
「私の横にいる関口雄飛選手に関しては、昨年からリザーブドライバーとしてずっと登録させていただいていますし、チームのコーディネーターとしても全戦大活躍してくれていますが、基本的に可夢偉選手が乗れないことが分かっている第2ラウンドに関しては、TGRさんと協議をして決めていくという考えです」
「可能性があるドライバーとしてはいくつか候補が挙がっていますけども、開幕戦が終わってすぐのタイミングには決まると思っています」
このように土居監督は、チームのリザーブドライバーである関口以外にも候補がおり、TGRと協議の上で代役を決めることになると明かした。そこで、候補になり得るドライバーの状況をまとめる。
まず関口に関しては、2023年を最後にスーパーフォーミュラのレギュラーシートを失っており、昨年からはKCMGで小林をサポートする立場に回っている。ただ、その中で彼は土居監督からチャンスを与えられ、2023年、2024年と年末の鈴鹿テストに参加することができた。特に昨年のテストは「このテストにかなり懸けている」と語るなど、復帰の足掛かりとすべく強い意気込みを見せていた。

関口がトップタイムを奪うべく臨んだテストの結果は、トップからコンマ6秒落ちの6番手。ブランクを考えれば上々のタイムと言えたが、アタックを完璧にはまとめ切れず「ちょっと厳しかったな。もっと上に行けると思っていた」と悔しさを滲ませていた。
今も変わらず速さを持ち合わせていることをアピールした関口だが、土居監督が言うようにチームの一存ではなくTGRの意向も絡んでくることを踏まえると、若手ドライバーがそのシートをおさえる可能性もあると言える。
その筆頭株と考えられるのが育成ドライバーの野中誠太。彼は今季のTGR体制発表の中で、『全日本スーパーフォーミュラ選手権 リザーブ』と表記されており、KDDI TGMGP TGR-DCのドライバーラインアップにレギュラーの小高一斗と平良響と共に併記されている。これについてTGRは、野中が陣営全体のリザーブドライバーであり、シーズン中は基本的に育成チームであるKDDI TGMに同行する予定であると説明している。
さらに野中は昨年末の鈴鹿テストでもKCMGから2日間参加しており、レギュラー陣と遜色ないタイムを記録。ルーキー枠の3日目は今季PONOS NAKAJIMA RACINGから参戦するイゴール・オオムラ・フラガに次ぐ2番手につけた。

野中は2021年から4シーズン戦い、昨年タイトル争いに絡んだスーパーフォーミュラ・ライツ(SFライツ)は卒業。残すはトップフォーミュラのみだ。土居監督からも昇格に値する存在だと評価されている野中がもてぎでデビューを果たしても何ら不思議ではない。
その他、同じく昨年末のテストにTOM’Sから参加した小林利徠斗もトヨタ育成のホープであり、昨年のSFライツをランキング2位で終えた逸材だ。ただ一昨年まではF4に乗っていた小林にとっては大きなステップアップとなる上に、件のテストでも野中とは対照的に慎重にペースを上げていき、スーパーフォーミュラ車両の感覚をじっくり掴んでいる印象だった。現在の立ち位置、そしていきなりの実戦でチームに溶け込んですぐにタイムを出す必要があることなどを鑑みても、トヨタ育成から選ばれるのであれば野中が現実的か。

“大穴”として考えられるのは、外国人ドライバーのサプライズ起用。世界には“TGRファミリー”として戦うドライバーが多くおり、昨年はIMSAからベン・バーニコート、WECからニック・デ・フリーズが参戦し、年末のテストにはTGRと提携するハースF1のオリバー・ベアマンが参加して大きな話題を呼んだ。
とはいえもてぎ戦の週末にはWECもF1(さらにFIA F2)もある。IMSAを戦うバーニコートなら不可能ではなさそうだが……いずれにしても選択肢はかなり限られていると言わざるを得ない。