SFもてぎでフェネストラズが上位進出のトムス 2台のパフォーマンス差が縮まった要因は?「坪井と同じようなコメントをしていた」

SFもてぎでフェネストラズが上位進出のトムス 2台のパフォーマンス差が縮まった要因は?「坪井と同じようなコメントをしていた」

スーパーフォーミュラにおいて過去数年間、2台揃って上位のリザルトを残すことに苦労し続けたVANTELIN TEAM TOM’S。今回の第3戦・第4戦もてぎでは、ディフェンディングチャンピオンの坪井翔だけでなく新加入のサッシャ・フェネストラズも躍動し、これまでの呪縛から解き放たれたかのような週末となった。

これまで数多くのシリーズタイトルを獲得してきた名門トムスは、最近でも2023年に宮田莉朋が、2024年に坪井がドライバーズチャンピオンに輝いたが、その間もう1台のマシンが苦戦。ジュリアーノ・アレジから笹原右京にドライバーが変わり、さらにクラッシュを受けてモノコックを変更するなどパッケージの変化もあったが、状況はなかなか好転して来なかった。特に昨年は坪井がチャンピオンとなった一方、笹原がノーポイントに終わるなど、その差は顕著であった。

そして今季、坪井のチームメイトとなる37号車のドライバーとしてサッシャ・フェネストラズが加入。KONDO RACING時代の2022年にランキング2位を獲得した実力者ではあるが、ここ最近はフォーミュラEという全く性質の異なるカテゴリーを主戦場にしていたというブランクもあり、開幕前テストではセットアップを煮詰めることよりもフェネストラズの再習熟に重きを置いたメニューを進めていたという。

開幕の鈴鹿ラウンドではトラブルなどもあり入賞には届かなかったフェネストラズだが、もてぎでの第3戦では予選5番手を獲得、決勝ではスタート時の失速で順位を落とすも挽回して8位に入った。翌日の第4戦でも2戦続けての5番グリッドを確保し、決勝でも上位3台からは離されながらも後続を抑え切って4位でフィニッシュした。

予選で2戦とも坪井を上回り、第4戦の決勝ではトラブルでリタイアとなった坪井の穴を埋めるかのように多くのポイントを持ち帰ったフェネストラズ。ついにチーム内のパフォーマンス差が埋まろうとしているが、その要因はどこにあるのだろうか?

37号車に光明がさすレースとなった第3戦の後、これまでアレジ、笹原を担当し、今季フェネストラズを担当する大立健太エンジニアに話を聞いたところ、基本的には坪井のセットアップを“借りる”形で進めていたと説明した。

ただ、チームメイトのセットアップをコピーすることが万能な解決策と言えないことは、これまでのスーパーフォーミュラの歴史が示している。トムスに限らず、チーム内でパフォーマンスの差が出るケースは往々にしてある。速いドライバーのセットアップを真似して結果が出るのであれば話は早いが、そうはいかないのだ。

その理由は様々考えられるが、ドライバーそれぞれのフィーリング、感じ方の違いも一因になっているかもしれない。

大立エンジニアに、チームメイトのセットアップをコピーしてうまくいく時とそうでない時にはどういう違いがあるのかと尋ねると、彼は「そこは結構難しいですね」としつつも、ふたりのドライバーのフィードバックが一致するかどうかは大きいと答えた。

「今回は持ち込みのセットアップの段階から、2台とも後ろ(リヤのグリップ)がないという方向のフィードバックでした。そこを直していく上で色々なことを試したのですが、ひとつ『これは効くね』というモノがあり、それを取り入れたから(好結果につながった)ということはあります」

「やっぱりふたりのコメントがある程度揃っていないと、同じ方向のセットアップにしても難しいですね。今回に関してはふたりが同じようなコメントをしていて、そこが一番大きな違いでした。例えば去年やその前は、コメントが(ふたりで)違う方向にいっているから、この方向でやっていったらダメだなと思うことがありました」

「ドライバーによってそれぞれ感じ方、捉え方、荷重の動かし方に違いがあります。コーナーのエントリーで曲がって欲しい人、エントリーよりもミッド(中間)が曲がって欲しい人……色々なタイプがいると思います。それは誰が良い悪いということではありません。同じセットアップにしても同じフィードバックが返ってこないのは、そういう要因があると思います。ただそこもタイヤの状況やコンディションに左右されてしまうモノなので、一概には言えないのですが……」

モータースポーツ、とりわけトップレベルのカテゴリーは非常に繊細で難解な競技と言える。マシンのセッティングを煮詰めていく上でも、ドライバーのフィーリング、車体の持つクセ、その時その時の路面コンディションなど全てと噛み合わせるのは容易なことではない。実力あるドライバー、エンジニア、チームでも、それらのボタンがわずかにかけ違っただけでも中団や下位に飲み込まれてしまうのだ。

上記のコメントを聞くと、坪井とフェネストラズのドライビングスタイルが似ていることがプラスに働いているのではないかとも推測できる。しかし大立エンジニア曰く「サッシャと坪井君を比べても、ドライビングとしては結構違うんですよ」と言う。ただ「サッシャもなるべく頑張ってそこをマネージしようとする姿勢がある」とのこと。

この件について第4戦の後にフェネストラズ本人にも尋ねてみたところ、彼は「同じではないけど似ている」と表現する。

「難しいところだね。これは誰だってそうかもしれないけど、(坪井とは)同じではないし少し違いがある。でも似ていると思うよ」

「坪井は僕よりもう少しオーバーステアなクルマが好みで、そういうクルマでも自信を持って走れる。特に僕は2年間スーパーフォーミュラで走れてなかったから、マシンをねじ伏せる上で自信をつけないといけない」

「でも似たドライビングスタイルだからそれは良いことだ。今日もチームに話したけど、僕にとっては坪井とデータの比較がしやすいんだ。鈴鹿はセットアップが違っていたから比較ができなかったけど、今は近いセットアップをしているからふたり一緒に改善していきやすい」

今後に向けてポジティブな傾向が見られるトムスとフェネストラズだが、フェネストラズは現在の結果に完全には満足していない。朗らかな笑顔の裏に闘争心を隠し持つ彼は、もてぎのレースウィークをこう総括した。

「現実的なことを言えば、このチーム(37号車)にとってはここ数年厳しい時期が続いていたから、予選5番手と決勝4位は彼らにとって当然良い結果だ」

「でも僕は勝つためにここに来ている。全然ダメなのよりはマシだけど、僕たちにはトップを争うほどのペースはない。タイヤのデグラデーション(性能劣化)もかなりあったし、バランスも改善できていない。だから少し不満なんだ。とはいえたくさんポイントを獲れたこと自体は嬉しいけどね」

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