<大相撲春場所>◇5日目◇13日◇エディオンアリーナ大阪
大関経験者で大けがから復帰した、西三段目21枚目の朝乃山(31=高砂)が、無傷の3連勝で、幕内だった昨年春場所以来、1年ぶりの勝ち越しに王手をかけた。
甲山親方(元幕内大碇)の次男、18際の碇潟と初顔合わせ。相手が立ち合いで足を滑らせ、一瞬、背後を取った。だが動きの速さで、すぐに向き直されると、相手の右からの突き落としに、わずかによろめいた。それでも圧力をかけて押し倒し。13歳年下の相手に、経験の差を見せつける貫禄勝ちを納めた。
取組後は「今日の相手が、この3日間の中でも若々しかった。先場所も付け出しで6番勝っていて、油断できなかった」と、難敵と認めて臨んでいたと明かした。相手は埼玉栄高で国民スポーツ大会少年4位に入り、三段目最下位格から先場所、初土俵に踏んで6勝1敗。もともと前日4日目の二番相撲の取組後も、この日の対戦を予想し「幕内にはいないタイプ」と、174センチ、124キロと、決して大柄ではない中で、スピードとパワーを備えた取り口に警戒心を強めていた。
「勝負の世界なので何が起こるか分からない。勢いのある相手だけど、ざんばらなので負けられなかった」と話した。ざんばら髪と相手との対戦は23年春場所、十両土俵で伯桜鵬(当時のしこ名は落合)を破って以来だった。
東前頭12枚目だった昨年7月の名古屋場所4日目一山本戦で、左膝前十字靱帯(じんたい)断裂などの重傷を負った。直前の昨年夏場所も、反対の右膝を痛めて全休しており、先場所まで5場所連続で休場。三段目の土俵は3度目で「早い時間はどうしても、土俵がカラカラになる」と、観客席がまばらで空気が乾燥し、滑りやすいことも頭に入れてのクレバーな戦いぶりだった。経験の差も随所で見せ、まずは通過点の勝ち越しまで、あと1勝というところまでたどり着いた。