翔猿を押し出しで破った王鵬(右)=エディオンアリーナ大阪(撮影・林俊志)
大相撲春場所3日目(11日、エディオンアリーナ大阪)新三役の関脇王鵬(25)は翔猿(32)を押し出して初白星を挙げた。新横綱豊昇龍(25)は平幕若元春(31)を首投げで破り、2勝1敗と白星先行。2大関は大の里(24)が豪ノ山(26)を押し出して3連勝。初のかど番で臨む琴桜(27)は小結阿炎(30)に押し出されて早くも2敗目を喫した。阿炎は1横綱1大関を破って3連勝。
星勘定に踊らされない。連敗発進となった王鵬が完勝。新三役で初白星となったが表情を崩さず、声のトーンも変わらなかった。
「特に思うところはない。こんなところでホッとなんてできない」
17センチ低い173センチの翔猿を左からおっつける。突き上げて押し込むと、相手はよろめきながら花道まで吹っ飛んでいった。「相手に合わせず、自分の高さで取れた」。
史上2位の32度の優勝を誇る「昭和の大横綱」大鵬(故人)の孫。1月の初場所は幕内自己最多の12勝を挙げ、千秋楽では三つどもえの優勝決定戦も経験。新入幕から3年かかったが、新三役で関脇に就いた。師匠の大嶽親方(元十両大竜)によると、周囲から「いつ『大鵬』のしこ名を継ぐのか」と問われることが多くなったそうだ。
だが、それはできない。野球の永久欠番のように「止め名」になっているからだ。しこ名は現在の年寄名跡と重なるものは認められない。現役時代に顕著な実績を残した谷風、雷電、常陸山、太刀山、栃木山、双葉山なども使えない。さらに一代年寄として認められた大鵬、北の湖、千代の富士(辞退)、貴乃花も名乗ることができない。
王鵬のしこ名は小学生のころ、わんぱく相撲で堂々と振る舞う姿を見た師匠がひらめいたもの。以来温め、新十両昇進の際に命名した。候補には「太鵬(たいほう)」や「天鵬」もあったが、大嶽親方は名実ともになじんできたと感じている。
190センチ、179キロ。体格では祖父の現役時の187センチ、153キロを上回り、王鵬の字面と四角張った体つきもよく似てきたという。番付を上げることは、自らしこ名を育てる作業でもある。(奥村展也)