【スーパーフォーミュラ完全選手名鑑2025】「アジア最速」を競う22人とは? 全チーム&ドライバー情報を網羅!

【スーパーフォーミュラ完全選手名鑑2025】「アジア最速」を競う22人とは? 全チーム&ドライバー情報を網羅!

日本最高峰、そしてアジア最高峰のフォーミュラカーレースとして位置付けられる全日本スーパーフォーミュラ選手権。“F1の次に速い”とも言われ、世界からも注目を集めるこのレースは、3月7日(金)〜9日(日)に鈴鹿サーキットで2025年シーズンの火蓋が切られる。

今季はスポーツテレビ局のJ SPORTS、スーパーフォーミュラ公式デジタルプラットフォームの『SFgo』、そして無料配信のABEMA(※決勝のみ配信)に加え、DAZNとFODといった動画配信サービスでもスーパーフォーミュラのレースの模様が見られることになった。ますますの視聴者増が予想される中、今回はスーパーフォーミュラに参戦する全チーム、ドライバーを選手名鑑形式で紹介する。

初めてスーパーフォーミュラを観るけど、誰を応援すればいいか分からない。選手やチームのことを知らないので、イマイチのめり込めない……。そんなビギナーの方々だけでなく、「自分の推しがどんな風に紹介されているのだろう」「初耳の情報が隠されていないだろうか」と気になるコアファンの方々も含め、ぜひ現地や自宅での観戦のお供としてお楽しみいただければ幸いだ。

スーパーフォーミュラ基礎知識

・全日本F2、全日本F3000、フォーミュラ・ニッポンなどと名を変えながら50年以上続いてきたスーパーフォーミュラ。今も昔も多くのF1ドライバーや世界選手権レース王者を輩出しており、現在参戦するドライバーからも、後に世界の舞台で活躍するドライバーが生まれるかもしれない。

・車両、タイヤは全車同じで、エンジンはホンダとトヨタの2種類が存在するも性能が揃えられており、まさにイコールコンディション。その車両にミリ単位のセッティングを施し、速く走れるように調整するチーム力、そしてそのセッティングされた車両の力を最大限に引き出すためのドライバーの腕が前面に出るため、シリーズ側も“HUMAN MOTORSPORTS”を標榜している。

開催スケジュール

日程:3月7日(金)〜9日(日)

第1戦・第2戦

開催地:鈴鹿サーキット(三重県)

日程:4月18日(金)〜20日(日)

第3戦・第4戦

開催地:モビリティリゾートもてぎ(栃木県)

日程:5月17日(土)〜18日(日)

第5戦

開催地:オートポリス(大分県)

日程:7月18日(金)〜20日(日)

第6戦・第7戦

開催地:富士スピードウェイ(静岡県)

日程:8月9日(土)〜10日(日)

第8戦

開催地:スポーツランドSUGO(宮城県)

日程:10月10日(金)〜12日(日)

第9戦・第10戦

開催地:富士スピードウェイ(静岡県)

日程:11月21日(金)〜23日(日)

第11戦・第12戦

開催地:鈴鹿サーキット(三重県)

参戦チーム&ドライバー紹介

・VANTELIN TEAM TOM’S

2年連続でチャンピオンを輩出。今年は坪井&サッシャでチームタイトルも奪取だ

【スーパーフォーミュラ完全選手名鑑2025】「アジア最速」を競う22人とは? 全チーム&ドライバー情報を網羅!

チーム情報

本拠地:静岡県御殿場市
監督:舘信秀
テクニカルディレクター:山田淳
使用エンジン:トヨタ
ドライバー:#1 坪井翔 #37 サッシャ・フェネストラズ
エンジニア:#1 小枝正樹 #37 大立健太

過去6シーズンの成績


ドライバー
予選最高位決勝最高位ランキング
2019中嶋一貴/ニック・キャシディ4位(1回)優勝(1回)2位/48ポイント
2020中嶋一貴/ニック・キャシディPP(1回)優勝(1回)1位/77ポイント
2021中嶋一貴/宮田莉朋/ジュリアーノ・アレジPP(1回)優勝(1回)6位/37ポイント
2022宮田莉朋/ジュリアーノ・アレジ2位(4回)3位(2回)6位/59ポイント
2023宮田莉朋/ジュリアーノ・アレジ/笹原右京2位(4回)優勝(2回)2位/109.5ポイント
2024坪井翔/笹原右京PP(1回)優勝(3回)3位/112.5ポイント

国内外のレースで数々の実績を残してきたトヨタ系名門チームであるTOM’S。特に近年は新たな黄金期に突入しつつあり、2023年、2024年はスーパーフォーミュラとスーパーGT(GT500)の国内2大カテゴリーで共にチャンピオンに輝いた。

そんなチームが「今年こそ」と虎視眈々と狙っているのが、スーパーフォーミュラでのドライバーズタイトル、チームタイトルの2冠。一昨年は宮田莉朋が、昨年は坪井翔がドライバー部門で王者となったが、もう1台のマシンの結果が振るわず、2台の成績を合算したチーム部門では王座を逃してきた。

今年は坪井のチームメイトとしてサッシャ・フェネストラズが加入。かつてスーパーGTで共に美酒を味わった経験がある大立健太エンジニアと共に、坪井に匹敵するマシンパフォーマンスを出せるかにも注目が集まる。

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・DOCOMO TEAM DANDELION RACING

昨年のチームチャンピオン。少数精鋭の職人集団

チーム情報

本拠地:京都府亀岡市
監督:吉田則光
使用エンジン:ホンダ
ドライバー:#5 牧野任祐 #6 太田格之進
エンジニア:#5 杉崎公俊 #6 吉田則光

過去6シーズンの成績

ドライバー予選最高位決勝最高位ランキング
2019山本尚貴/福住仁嶺PP(1回)優勝(1回)1位/50ポイント
2020山本尚貴/福住仁嶺PP(1回)優勝(1回)3位/72ポイント
2021福住仁嶺/牧野任祐/笹原右京PP(1回)優勝(2回)2位/86ポイント
2022牧野任祐/大津弘樹3位(3回)2位(1回)4位/91ポイント
2023牧野任祐/太田格之進PP(1回)優勝(1回)3位/69.5ポイント
2024牧野任祐/太田格之進PP(1回)優勝(4回)1位/148ポイント

1999年の創設当初から一貫してNTTドコモをメインスポンサーに、ドコモカラーのマシンで戦うダンディライアン。1台体制からスタートしたプライベートチームだったが、その後メキメキと実力をつけ、ドライバーズタイトル、チームタイトルに何度も輝いており、今やホンダ陣営のトップチームの一角という位置付けだ。

昨年は牧野任祐と太田格之進のコンビで9戦4勝を挙げる強さでチームタイトルを獲得。今季はドライバーラインアップ、エンジニア体制、マシンカラーリングも不変で、ドライバー/チームのダブルタイトルを目指す。

そのチームの特色は、“少数精鋭”で“職人気質”。チームのリソースをとにかくマシンを速くすることに投じるような一本気なスタイルで、マシンセッティングの肝となるダンパーは吉田エンジニアを中心に独自開発を続けてきた。2024年からは共通パーツ化によりオリジナルダンパーは使えなくなり、それが不利に働くかと思いきや、これまでの開発で得た知見も活かしながらむしろ強さを増してみせた。

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・TEAM MUGEN

昨季は無冠も強さは健在。オートバックスカラーで心機一転

チーム情報

本拠地:埼玉県朝霞市
監督:田中洋克
使用エンジン:ホンダ
ドライバー:#15 岩佐歩夢 #16 野尻智紀
エンジニア:#15 小池智彦 #16 田口顕人

過去6シーズンの成績

ドライバー予選最高位決勝最高位ランキング
2019ダニエル・ティクトゥム/パトリシオ・オワード/ユーリ・ヴィップス/野尻智紀2位(2回)優勝(1回)5位/25ポイント
2020笹原右京/野尻智紀PP(2回)優勝(1回)7位/42ポイント
2021野尻智紀PP(2回)優勝(3回)3位/77ポイント
2022野尻智紀/笹原右京PP(7回)優勝(4回)1位/187ポイント
2023野尻智紀/リアム・ローソンPP(5回)優勝(6回)1位/188.5ポイント
2024野尻智紀/岩佐歩夢PP(3回)優勝(2回)2位/112.5ポイント

ここ数年において、スーパーフォーミュラで最も成功を収めたチームと言えるのがTEAM MUGENだ。

かつては山本尚貴&阿部和也エンジニアを擁して2度のタイトルを獲得したが、2019年からの野尻智紀&一瀬俊浩エンジニアのコンビも6年間でポールポジション14回、優勝10回、シリーズタイトル2回と一時代を築いた。さらに近年は小池智彦エンジニアが手掛けるもう1台のマシンもそれに劣らない速さを見せており、2022年、2023年とチームタイトルを獲得した。

昨年はダンパーが共通パーツ化され、武器でもあったサスペンションセッティングの強みを削がれたこともあり、4年ぶりの無冠に終わった。しかし、未だタイトル候補の一角であることには変わりないだろう。一瀬エンジニアの移籍により今季から野尻の担当は田口顕人エンジニアとなるが、その新たなコンビネーションにも注目だ。

優秀な若手スタッフを多く抱え、強豪ながらもフレッシュなイメージも併せ持つTEAM MUGEN。田中洋克監督も人材確保には苦労していると苦笑するが、有力エンジニアの抜けた今季も総合力の高さを見せつけられるか。

なお、これまではレッドブルのコラボレーションでピエール・ガスリーやリアム・ローソンといった後のF1ドライバーを走らせてきたが、レッドブルのフルカラーリングでのサポートは昨年で終了。今年は心機一転、新スポンサーであるオートバックスのカラーとなった。

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・Kids com Team KCMG

昨季大躍進。未だあと一歩届かぬ“勝利”を今年こそ

チーム情報

本拠地:静岡県裾野市
監督:土居隆二
使用エンジン:トヨタ
ドライバー:#7 小林可夢偉 #8 福住仁嶺
エンジニア:#7 コシモ・プルシアーノ #8 田坂泰啓

過去6シーズンの成績


ドライバー
予選最高位決勝最高位ランキング
2019小林可夢偉5位(1回)2位(2回)8位/19ポイント
2020小林可夢偉/中山雄一/国本雄資4位(1回)3位(1回)8位/37ポイント
2021小林可夢偉/国本雄資/小高一斗10位(1回)8位(1回)10位/4ポイント
2022小林可夢偉/国本雄資5位(1回)5位(1回)10位/19ポイント
2023小林可夢偉/国本雄資6位(1回)6位(2回)8位/24.5ポイント
2024小林可夢偉/福住仁嶺PP(2回)2位(1回)4位/77.5ポイント

昨シーズンのスーパーフォーミュラで最大のサプライズのひとつと言えたのが、Kids com Team KCMGの躍進だ。

参戦チームの中では後発の部類に入るKCMGは、元F1ドライバーの小林可夢偉を長らく起用するも、あと一歩のところで勝利に届かず。2020年には2台体制に拡充し、最近ではサポーティングキャストを増加させるなどチームのテコ入れを進めてきた。

昨季は実力派の福住仁嶺を小林のチームメイトに迎え、現役トップドライバーの松田次生と関口雄飛がそれぞれをサポートする贅沢な布陣を敷いた。すると新加入の福住はポールポジション2回、表彰台2回と活躍。小林も久々の表彰台を獲得するなど、過去最高のチームランキング4位に入った。

ただ、長年の課題であったタイヤ交換のミスが足を引っ張り、福住の優勝のチャンスをフイにしてしまうレースも。しかしシーズン途中に練習体制の強化に取り組み、再発防止に努めている。何より、上位争いなどプレッシャーのかかる場面を多く経験することが、スタッフの糧になっているはずだ。今年こそ優勝を——。TOM’S、MUGEN、DANDELIONの“3強”に風穴を開けられるか。

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・PONOS NAKAJIMA RACING

山本尚貴が引退。今年は若手ふたりで“脱中団”へ

チーム情報

本拠地:静岡県御殿場市
総監督:中嶋悟
監督:伊沢拓也
使用エンジン:ホンダ
ドライバー:#64 佐藤蓮 #65 イゴール・オオムラ・フラガ
エンジニア:#64 加藤祐樹 #65 岡田淳

過去6シーズンの成績


ドライバー
予選最高位決勝最高位ランキング
2019アレックス・パロウ/牧野任祐PP(4回)優勝(1回)3位/28ポイント
2020牧野任祐/大湯都史樹2位(1回)優勝(1回)5位/57ポイント
2021山本尚貴/大湯都史樹2位(3回)2位(1回)4位/47ポイント
2022山本尚貴/大湯都史樹PP(2回)優勝(1回)5位/67ポイント
2023山本尚貴/佐藤蓮4位(1回)4位(1回)7位/31.5ポイント
2024山本尚貴/佐藤蓮3位(2回)3位(1回)5位/61ポイント

元F1ドライバー、中嶋悟氏が率いる名門チームNAKAJIMA RACING。かつては強豪としても名を馳せたが、最後のタイトル獲得は2009年まで遡る。近年もテストや春先のレースを筆頭に光る速さは多々見せているが、トップチームの一角となるにはあと一歩という状況だ。

今季は山本尚貴の引退により、リザーブドライバーだったイゴール・オオムラ・フラガが昇格。佐藤蓮との若手コンビを組むことになった。コース上ではいつでもマシンの限界ギリギリを引き出す佐藤(フラガ談)と、課題をひとつひとつ丁寧に潰していくタイプのフラガ(佐藤談)の化学反応にはチームも期待を寄せている。

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・KONDO RACING 

新加入オサリバンの実力やいかに

チーム情報

本拠地:静岡県御殿場市
監督:近藤真彦
使用エンジン:トヨタ
ドライバー:#3 山下健太 #4 ザック・オサリバン
エンジニア:#3 大駅俊臣 #4 阿部和也

過去6シーズンの成績


ドライバー
予選最高位決勝最高位ランキング
2019山下健太/国本雄資PP(1回)優勝(1回)6位/25ポイント
2020山下健太/サッシャ・フェネストラズ2位(1回)2位(1回)6位/46ポイント
2021山下健太/サッシャ・フェネストラズ/中山雄一4位(1回)7位(1回)9位/12ポイント
2022山下健太/サッシャ・フェネストラズ2位(3回)優勝(1回)3位/99ポイント
2023山下健太/小高一斗4位(1回)3位(1回)6位/42ポイント
2024山下健太/小高一斗PP(1回)2位(2回)6位/50ポイント

歌手・タレントで元レーシングドライバーの近藤真彦氏が率いるチーム。2018年にはチームチャンピオンも獲得したが、直近2シーズンは勝利がない。今年はドライバーやエンジニアの体制も変更し、高みを目指す。

エースドライバーはチーム在籍9年目となる生え抜きの山下。インパルから移籍してきたベテランの大駅エンジニアとの化学反応はいかに。もう1台のドライバーには、昨年までF2に参戦していたザック・オサリバンを迎えた。チームの最近の外国人ドライバーと言えば、ニック・キャシディ、サッシャ・フェネストラズと“当たり”が続いているが、オサリバンは2月のテストでもトップ10とまずまずの走りを見せており、そのポテンシャルが注目される。

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・SANKI VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING

ドライバーの実力は十分。ハマれば一気に浮上も?

チーム情報

本拠地:山口県周南市
監督:立川祐路
使用エンジン:トヨタ
ドライバー:#38 阪口晴南 #39 大湯都史樹
エンジニア:#38 渡邊信太郎 #39 岡島慎太郎

過去6シーズンの成績


ドライバー
予選最高位決勝最高位ランキング
2019石浦宏明/坪井翔2位(2回)2位(1回)7位/22ポイント
2020石浦宏明/坪井翔2位(1回)優勝(2回)2位/72ポイント
2021坪井翔/阪口晴南3位(2回)2位(2回)5位/37.5ポイント
2022坪井翔/阪口晴南2位(1回)2位(1回)8位/34ポイント
2023坪井翔/阪口晴南PP(1回)2位(2回)4位/68ポイント
2024阪口晴南/大湯都史樹PP(1回)2位(1回)7位/42ポイント

長らくトヨタ系チームとして国内レースで活躍するセルモとインギングによるレーシングチーム。2015年〜2017年は石浦宏明と国本雄資によって3年続けてタイトルを獲得するなど黄金期を築いた。ここ数年はやや苦戦するシーズンが多いが、ポールポジションや表彰台を獲得し、ポテンシャルの片鱗を見せている。

阪口晴南と大湯都史樹の元ホンダドライバーコンビは2年目に。チームの雰囲気も非常に良さそうで、ベテランの渡邊信太郎エンジニアは、非常にオープンな風土とドライバーの研究熱心さに居心地の良さと刺激を感じているとのこと。昨年はチームランキング7位に沈んだが、大湯のマシンが一貫したパフォーマンスを手にし、尚且つ阪口のマシンがトラブルフリーでシーズンを戦うことができれば、ポジションを大幅に上げていける予感だ。

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・ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL

昨年は歴史的低迷。変革進め新時代に突入

チーム情報

本拠地:静岡県御殿場市
総監督:星野一義
監督:星野一樹
使用エンジン:トヨタ
ドライバー:#19 オリバー・ラスムッセン #20 高星明誠
エンジニア:#19 オスカー・ゼラヤ #20 村田卓児

過去6シーズンの成績

ドライバー予選最高位決勝最高位ランキング
2019関口雄飛/平川亮PP(1回)優勝(2回)4位/27ポイント
2020関口雄飛/平川亮PP(2回)優勝(1回)4位/69ポイント
2021関口雄飛/平川亮/高星明誠PP(1回)2位(3回)1位/88ポイント
2022関口雄飛/平川亮PP(1回)優勝(3回)2位/126ポイント
2023関口雄飛/平川亮5位(1回)2位(1回)5位/58ポイント
2024テオ・プルシェール/ベン・バーニコート/平良響/ニック・デ・フリーズ/国本雄資9位(1回)6位(1回)8位/9ポイント

“元祖・日本一速い男”として知られる闘将・星野一義氏が興した古豪チーム。これまでに獲得したシリーズタイトルは数知れず……最近でも2021年にチームチャンピオンに輝いたが、昨年はランキング8位と、フォーミュラ・ニッポン時代以降では歴代ワースト順位となってしまった。

近年のインパルは予選での速さよりもレースでの強さを武器にしてきたが、昨年は予選での苦戦が顕著となり、グリッドの下位に沈んで入賞圏内まで浮上できないレースが続いた。さらに、F2チャンピオンのテオ・プルシェールがわずか1戦で離脱したのを皮切りに、19号車のドライバーが目まぐるしく変わったことも苦戦に拍車をかけたと言える。

今季は星野一樹監督が「変革の年」と言うように、体制面もガラリと変わった。ドライバーは一新され、共にルーキーのラスムッセンと高星を起用。エンジニア陣もベテランの村田卓児エンジニアが復帰し、アメリカのIMSAで活躍していたオスカー・ゼラヤが加入した。父・一義から受け継がれる“全開魂”はそのままに、息子・一樹が欧米の血も取り入れながら新たな色を加えようとしている。

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・KDDI TGMGP TGR-DC

新規チームもパッケージとしては経験十分。本領発揮はシーズン途中から?

チーム情報

本拠地:静岡県御殿場市
監督:片岡龍也
使用エンジン:トヨタ
ドライバー:#28 小高一斗 #29 平良響
エンジニア:#28 上城直也 #29 平野亮

過去2シーズンの成績(TGM Grand Prixとして)


ドライバー
予選最高位決勝最高位ランキング
2023大湯都史樹/大津弘樹/大草りき/ジェム・ブリュックバシェPP(2回)3位(1回)9位/20ポイント
2024Juju/松下信治/大津弘樹9位(1回)8位(1回)9位/3ポイント

今シーズンから新規に立ち上がった、トヨタの育成チーム。発端は、トヨタのスクール(TGR-DC RS)で校長を務める片岡が、トップカテゴリーでの若手育成を強化したいとモリゾウ(トヨタ自動車の豊田章男会長)に打診したところから始まる。そしてモリゾウの企画・監修という形で生まれたのが、このKDDI TGMGP TGR-DCだ。

レースの実働部隊は、昨年までの2年間スーパーフォーミュラに参戦していたTGM Grand Prix(セルブスジャパン)。メンテナンスガレージとしての経験・実績も豊富なチームだが、プライベートチームとして自社参戦するにあたっては資金面でかなり苦労しているという話もあったため、今回のTGR-DCとの提携はwin-winと言えるのではないだろうか。

元々ホンダエンジンが付いていたTGM Grand Prixの車両をトヨタエンジンに載せ替えるという異例な形での参戦に。同じ規格のエンジンとはいえど、ホンダとトヨタでは細かい取り回しやオペレーションなども異なるため、そこには苦労もあったという。載せ替えには無事成功して2月のテストに参加することができたが、ドライバー・エンジニアとのコミュニケーション構築、マシン熟成においては準備不足感も否めない。爽やかなKDDIカラーは好評を博しているが、その見た目に恥じない走りができるか。

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・San-Ei Gen with B-Max

ホンダのホープを預かる地域密着チーム

チーム情報

本拠地:神奈川県綾瀬市
監督:本山哲
使用エンジン:ホンダ
ドライバー:#50 小出峻
エンジニア:#50 村井寛太

過去6シーズンの成績


ドライバー
予選最高位決勝最高位ランキング
2019ルーカス・アウアー/ハリソン・ニューウェイ3位(2回)3位(2回)8位/20ポイント
2020名取鉄平/高星明誠/セルジオ・セッテ・カマラ/松下信治/シャルル・ミレッシPP(1回)3位(1回)9位/16ポイント
2021松下信治PP(1回)3位(2回)8位/29.5ポイント
2022松下信治8位(1回)優勝(1回)9位/21ポイント
2023松下信治/ラウル・ハイマン6位(1回)7位(1回)12位/4ポイント
2024木村偉織11位(1回)9位(1回)10位/3ポイント

今ではホンダ若手の育成チームといったイメージもついたB-Max Racing。2017年にスーパーフォーミュラ参戦をスタートすると、モトパークと提携した2019年から戦闘力アップ。そのコラボレーションは2年で終了となったが、2022年には松下信治が雨の鈴鹿でチームに初優勝を届けた。

その初優勝に際してチームのファクトリーがある神奈川県綾瀬市の市役所を表敬訪問したのをきっかけに、同市とは今も深い関係を築いている。地域のイベントでの車両展示や学校訪問などを通して、市民にB-Max RacingとスーパーフォーミュラをPRしており、レース界でも珍しい“地域密着型チーム”と言える。自身も“DRAGON”の名でレースに参戦する組田龍司総代表は、綾瀬市の公道でレーシングカーを走らせることを夢見ている。

近年はFIA F4、スーパーフォーミュラ・ライツといったステップアップカテゴリーでホンダ育成プログラムのHFDPとコラボしており、今季スーパーフォーミュラのドライバーに起用するのも、昨年同チームでSFライツのチャンピオンに輝いたHFDP生、小出峻だ。1台体制で結果を残すことは容易ではないが、国内トップフォーミュラで4度王座に輝いた本山哲監督の下、好結果を狙う。

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・docomo business ROOKIE

大嶋と共に、“SUGOの歓喜”を超えろ

チーム情報

本拠地:静岡県小山町
監督:石浦宏明
使用エンジン:トヨタ
ドライバー:#14 大嶋和也
エンジニア:#14 木谷彬彦

過去5シーズンの成績

ドライバー予選最高位決勝最高位ランキング
2020大嶋和也9位(1回)9位(2回)10位/5ポイント
2021大嶋和也16位(2回)8位(1回)11位/2.5ポイント
2022大嶋和也13位(1回)13位(1回)-位/0ポイント
2023大嶋和也8位(1回)4位(1回)10位/13ポイント
2024大嶋和也8位(1回)11位(1回)-位/0ポイント

トヨタ自動車の会長で、クルマ好きのおじさん“モリゾウ”を名乗る豊田章男氏がオーナーを務めるチーム。2020年に大嶋和也の1台体制で参戦をスタートすると、以来一貫して大嶋を起用し続けている。

苦しいシーズンが続いているが、チームにとってのハイライトと言えるのが2023年のSUGO戦。いつになく高いパフォーマンスを発揮したマシンは大嶋の手によって4位でフィニッシュ。チームは歓喜に包まれた。これが現状のベストリザルトとなっているが、今季はそれ以上の結果……つまり表彰台を目指す。

富士スピードウェイと目の鼻の先にファクトリーを構えるルーキーレーシング。チームの体制も日に日に強化されているが、2台体制への拡充はすぐには実現しなさそう。石浦監督は「今は軸となる人材を揃え、実力のベースアップを目指している。まずはしっかり1台でチームとして中長期目線で実力を発揮できるようにするのが目標」とコメントしている。

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・ThreeBond Racing

今季のダークホース。チャンピオンエンジニアとどこまで駆け上れるか

チーム情報

本拠地:東京都八王子市
監督:塚越広大
使用エンジン:ホンダ
ドライバー:#12 三宅淳詞
エンジニア:#12 一瀬俊浩

過去5シーズンの成績


ドライバー
予選最高位決勝最高位ランキング
2020タチアナ・カルデロン/塚越 広大14位(1回)12位(3回)-位/-ポイント
2021タチアナ・カルデロン/塚越 広大9位(1回)12位(1回)-位/-ポイント
2022福住仁嶺6位(1回)8位(1回)11位/3ポイント
2023福住仁嶺5位(1回)7位(1回)11位/9ポイント
2024三宅淳詞14位(1回)14位(2回)-位/-ポイント

接着剤などの製造・販売を手掛ける企業で、古くからモータースポーツを支援してきたスリーボンドによるレーシングチーム。当初は道上龍率いるドラゴコルセとのジョイントで参戦を始め、今年で6年目となるが、1台体制ということもあり厳しい戦いが続いている。昨年も三宅淳詞を起用したがほとんどのレースで最下位グループでの戦いを強いられた。

しかし今季は大きく飛躍する予感だ。TEAM MUGENで2度のチャンピオンに輝いた一瀬俊浩エンジニアが電撃加入。マシンセットアップの考え方や、チームの全体的なオペレーションなどが既にテコ入れされているようだ。勝ち方を知る男の加入は既に目に見える形で効果を見せており、2月の開幕前テストでは三宅がトップ3のタイムを出した。まだテストの段階とはいえ、三宅が昨年体験したことのないレベルのグリップを感じているのは紛れもない事実だ。

今季最大のサプライズになるだけではなく、スーパーフォーミュラにおけるドライバーとチームの“総合力”の重要性を再確認させる存在になりそうなThreeBond Racing。塚越監督はチームの成績だけでなく人気投票でも最下位となっている現状を「まずい」と感じているが、そこは三宅が「イケメンになってモテる」ことで改善するらしい……?

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・HAZAMA ANDO Triple Tree Racing

準備不足で迎える開幕。Jujuの成長に貢献できるか?

チーム情報

本拠地:神奈川県厚木市
監督:野田英樹
使用エンジン:ホンダ
ドライバー:#10 Juju
エンジニア:#10 笠井昭則

過去6シーズンの成績

なし(初参戦)

Jujuこと野田樹潤にスーパーフォーミュラで2年目のチャンスを。その思いから彼女の父である野田英樹氏、そしてマネージャーの村司宏樹氏らによって立ち上げられた新規チーム。チーム名の“Triple Tree”は、上記3名の名前に全て“樹”が入っていることに由来する。

彼女自身の注目度、さらには村司氏の営業力も相まって、メインスポンサーの安藤ハザマをはじめ数多くの企業が支える体制を構築しているが、スタッフをイチから集め、新たにデリバリーした新車を急ピッチで組み上げるという慌ただしいスタートとなった。しかも開幕前テストは雪の影響もあり、1日弱しか走行できず。Jujuにとっては、TGM Grand Prixから参戦した昨年以上に厳しい開幕になるかもしれない。

急造のチームとはいえ、チーフアドバイザーに元TEAM MUGEN監督の手塚長孝氏、チーフエンジニアに最近までKCMGのテクニカルディレクターを務めていた笠井昭則エンジニアを起用するなど、コアとなる人材は頼もしい。Jujuが2年目の成長を遂げる上で不足ない環境を、1年をかけて構築できるかも鍵となる。

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