2018年3月20日 

平昌パラ2018:パラスノーボード(総集編)

世界最高峰の舞台で切った3人の「新たなスタート」

バンクドスラロームで金、スノーボードクロスで銅を獲得した成田緑夢

初めてパラリンピックの正式種目として採用された「スノーボード」。日本からは、成田緑夢(24=近畿医療専門学校)、小栗大地(37=三進化学工業)、山本篤(35=新日本住設)の3人が出場した。彼らにとって、初めての冬季パラリンピックはどんなものだったのか。パラスノーボードの歴史における新たな「幕開け」となった平昌でのレースを振り返る。

一度も「リード」を許さなかった成田の強さ

バンクドスラローム3本目で48秒68の最速タイムをマークした成田緑夢

成田緑夢というアスリートの滑りは、まさに「圧巻」だった――。

初めてのパラリンピックのレースが幕を開ける前日、選手村ではパラスノーボード日本代表の記者会見が行われた。会見場に現れた成田は、こちらの予想をはるかに超えた「勝負師」と化していた。会見中も、丁寧な受け答えは変わらないものの、トレードマークと言ってもいい、いつもの屈託のない笑顔は一切見せなかった。

成田が初めて自分自身で掲げた大きな目標「オリンピック、パラリンピック」。その舞台にかける思いの強さが、その姿に映し出されていた。

1種目目のスノーボードクロスで、成田は銅メダルを獲得。金メダルは逃したものの、実力的には他を圧倒していたと言っても過言ではなかった。タイムトライアルの予選では、1本目で58秒21の好タイムでトップに立つと、20人中ただ1人、2本目を棄権。そして、成田不在で行われた予選2本目でも、彼を凌ぐ者は出てこなかった。

続いて行われた決勝トーナメントでは、準決勝で敗れはしたものの、「相手に競り負けた」というよりも、自らに課した新たな挑戦をしたうえでの転倒が敗因だった。そして3位決定戦では、アルペンスキーの一つとして公開競技で実施されたソチパラリンピックの金メダリスト、エヴァン・ストロング(米国)に競り勝ってみせた。

結果的に銅メダルながら、成田は「世界ランキング1位」の風格を漂わせていた。その理由の一つには、誰一人、一度たりとも成田を「リード」した者はいなかったことが挙げられる。

タイムトライアルの予選では、2本あわせて成田はトップをキープした。一方、1対1方式の決勝トーナメントにおいては、転倒以外は先頭を譲るシーンは一度たりともなかった。

だからなのだろう。結果としては金メダルを逃したにもかかわらず、成田の強さは光っていた。そして、その強さは2種目目の「バンクドスラローム」では金メダルという最高の結果となって示された。

最後のレースを終え、今後について記者から質問されると、成田は「今、まさに平昌が終わったばかりなので……」と、明言を避けた。果たして、いつ、どんなかたちで、次なる目標が発表されるのか。

「見ている人をドキドキワクワクさせたい」と語る成田。そんな魅了してやまない「緑夢劇場」の続きが楽しみだ。

ライバルとの互角の勝負で魅せた小栗

2種目入賞の小栗大地

元プロスノーボーダー小栗は、スノーボードクロスで7位、バンクドスラロームで6位と、いずれも入賞を果たした。メダルを狙っていた本人にとっては納得のいかない結果だが、それでも小栗もまた、平昌の地で魅せてくれた。特に、1種目目のスノーボードクロスでは、その実力の高さを証明している。

小栗は前日の会見で「一番のライバル」にクリス・ボス(オランダ)を挙げていた。準々決勝は、そのボスとの対戦だった。早くも優勝候補の相手との対戦となったことについての記者からの質問にも「組み合わせとしては悪くはなかったです。いずれにしても、ベスト4に残るには、速い選手と対戦しなければいけないので」と強気な姿勢を崩さなかった。

その言葉通り、スタートでボスに前を譲ったものの、「隙あらば抜いてやろうと思いながら滑っていた」という小栗は、ボスの後ろにピタリとつき、プレッシャーをかけ続けた。その距離は、終盤には一瞬、2人の板が当たるほどわずかで、実力は互角と言ってよかった。

スノボードクロス準々決勝でクリス・ボスと競り合う小栗大地(右)

小栗は「自分の方が技術は上」と自信を持つバンクの最後でボスと並び、ゴール前に待ち受けるキッカーで勝負するイメージを抱いていた。しかし、逆に最後はキッカーで離されてしまい、逆転することはできなかった。

それでも「抜けなかったのは悔しいが、自分の実力を出し切って、クリス・ボスといいレースができたので、清々しさもある」と、納得の表情を見せていた小栗。初めてのパラリンピックについて聞かれると、彼はこう答えた。

「パラリンピックは確かに特別な大会ではあるけれども、自分にとってはそれほどいつものW杯などとの違いはありませんでした」

この強気な姿勢が、「小栗大地」というアスリートだ。

「また新しいチャレンジをしたいと思っています。でも、その内容についてはまだ内緒です(笑)」と小栗。今後の動向が気になるところだ。

山本、「刺激」を求めての「挑戦」

今大会で「二刀流」を実現させた山本篤

今大会で「二刀流」を実現させたのが、山本だ。夏季パラリンピックには、2008年の北京から3大会連続で出場し、北京、2016年リオでは走り幅跳びで銀メダルを獲得するなど、世界トップレベルのロングジャンパーとして知られている。その山本が、今回、初めて冬季パラリンピックに出場した。

結果は、スノーボードクロスでは13人中12位。バンクドスラロームにおいては1本目は失格、2本目は転倒し、その転倒で左肩を脱臼した山本は、3回目は棄権を余儀なくされ、一度もフィニッシュすることができなかった。山本にとって初めての冬季パラリンピックは、厳しい現実を突きつけられるかたちで終わった。

しかし、山本はスノーボードへの挑戦をアスリートである自分にとってはプラスだったと考えている。帰国直前のブログにはこう書かかれている。

<全てを終えて、スノーボードに挑戦してよかったと感じています。僕自身、いろいろな刺激を求めていました。その1つがスノーボードでした。そしてたくさんの刺激をもらいました。>

10年前、初めてパラリンピックに出場した北京大会のことを思い出したという山本。取り戻した初心の感覚が、ベテランアスリートをさらなる飛躍へと導いていくに違いない。

(文・斎藤寿子、写真・竹内圭)

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